The Persnickety Immigrant

好きなことを好きなだけ書くブログ。

アメリカで国際結婚して初めてのタックスリターンはどうやるの?

*本時期は2020年1月現在の情報です*

そろそろタックスリターンの時期がやってきますね。
日本だと馴染みがない場合もありますが、アメリカだと必須ですよね。

今回は国際結婚をして初めて迎えるタックスリターンについて調べてみました。
原文が英語の場合はゆるっと訳しています。

結論!

結婚して1回目のタックスリターンを夫婦ジョイントで行う場合には、プロに頼んだほうが良いです!
もし、前年度※のタックスリターンの対象ではなく、配偶者がジョイントで行わない時には、自分でもできそうです。

また、タックスリターン対象者で日本に一定以上の資産がある場合には別途申告が必要になっています。

 ※この記事での前年度は2019年1月1日から12月31日までを指します。

ここから詳しく見ていきましょう。

タックスリターンとは

タックスリターンとは、確定申告のことです。
日本で企業に勤めていると大抵の場合は企業の年末調整によって12月に超過納税分が返ってきたりしますが、アメリカでは自分で申告が必要です。
こちらの締め切りは毎年4月15日となっています。

タックスリターンにかかる費用について話題になることもありますが、収入が一定以下且つ自身でオンラインにてリターンをする場合には費用は免除されます。
2019年は69,000ドルが上限額になっています。*1
この額は毎年変わるので確認が必要です。

ちなみに、前年度日本で勤務し所得税を払っていたら確定申告をしたほうが得だと言われています。
所得税は一年間の予想収入に基づいて天引きされているため、年の途中で退職すると過払い分が戻ってきません。
インターネットから源泉徴収票の額を入れて申告書は作成することができるので、行ったほうがお得です!
 確定申告書の作成はこちらから: 【確定申告書等作成コーナー】-作成コーナートップ

タックスリターンの対象者は

タックスリターンは基本的にResidentが対象者になっています。
民法におけるResidentについては聞きなれているかと思いますが、税法上におけるResidentの扱いはそれとは異なります。

Residentの種類は2種類あり、Resident AliensとNonresident Aliensとなっています。
Resident Aliensはアメリカ市民と同じように世界中の収入に対して課税が行われ、Nonresident Aliensについてはアメリカ国内での収入やアメリカと関連する貿易や商業からの収入が対象となります。*2

以下二つのルールのうちいずれかに当てはまればResident Alienになります。

 1)the Green Card Test: USCISからグリーンカードを受け取っているか*3
 2)the Substantial Presence Test: 1年間のうちに何日アメリカに滞在していたか。以下二つの条件を満たせばResidentになります。

   1. 前年度に31日以上の滞在

   2. 前年度を含めた過去3年間において合計183日滞在、数え方は以下の通り
・前年度の全てのアメリカ滞在日数
・前年度の1年前(2018年)の3分の1の滞在日数 (例えば9日であれば3日と数える)
・前年度の2年前(2017年)の6分の1の滞在日数*4

グリーンカードを持っていればタックスリターンの必要があり、グリーンカードが手元になくても滞在期間が規定以上であれば、タックスリターンの必要がある、というのが一般的な定義です。

ここで少しややこしくなるのが国際結婚のタックスリターンです。
まずは結婚した場合のタックスリターンを見てみましょう。

シングルと結婚した場合ではタックスリターンは異なるのか。

まず、婚姻関係がある二人のタックスリターンについて説明します。

アメリカでは結婚している二人は“Married Filing Jointly”と”Married Filing Separately”の二つの方法でタックスリターンを行うことができます。*5
簡単にいうと前者は結婚したので二人の収入と控除を一緒に考えることで、後者は結婚はしたが別々に収支を扱うことを言います。

ジョイントと別々でタックスリターンを出すかの決定打のほとんどは、どちらの方法で出したほうが税金が安くなるかによるかと思います。
細かい計算式はややこしいので、こちらのサイトを参考にしてください。
結婚した場合、ジョイントか別々でタックスリターンをするか選択しておおよそのリターンを計算することができます。
 参考: Income Tax Calculator and Refund Estimator 2019-2020 | H&R Block®
  

国際結婚の場合にはタックスリターンはどうなるのか。

さて、ここからは国際結婚の場合を見ていきましょう。

国際結婚の場合にも通常の結婚と同じようにジョイントと別々申告の二つを選ぶことができますが、アメリカ人同士の結婚と大きく異なってくるのが、「アメリカ市民ではない配偶者をResidentとしてみなすことを選ぶことができます。」*6
原文を見ると「選ぶことができる」となっているので、選ぶことができないとも解釈し、その二通りの方法を見ていきましょう。
忘れてはいけないのは、もしResidentの条件を満たしている場合には方法に関わらずタックスリターンを必ず行わなければなりません。

1)ジョイントでタックスリターンをする場合
あなたがResidentの条件を満たしているかに関係なく、タックスリターンはジョイントで行うことができます。

訳:
ジョイントでタックスリターンをすると決めた場合には以下の条件が当てはまります。
 ・税法上ではあなた自身が前年度中全ての期間、Residentであるとみなされます。(略)
 ・前年度分は二人ジョイントでタックスリターンをすると決めることができます。(その後の年度に別々で出すことももちろん可能です。)
 ・申請者と配偶者が前年度に世界中で得た収入がタックスリターンの対象となります。*7

ジョイントでタックスリターンを行う場合にはあなたの日本での収入もアメリカの課税対象になるようですが、日本で税金を支払っていればそれが一定額免除されるようです。*8

2)タックスリターンを夫婦別々に行う場合

これは前述したと同じように、結婚はしたが別々に収支を扱い、別々にタックスリターンを行うことを指しています。

あなたが前年度にアメリカに移住し、前述のResidentの条件を満たしていない場合には、あなたのタックスリターンを行う必要はなく、配偶者が”Married Filing Separately”の条件でタックスリターンを行うだけですみます。
あなたがResidentの条件に当てはまる場合、この方法を選ぶと配偶者とは別にタックスリターンが必要になります。


ここで注意したいのは州によっては、別々にタックスリターンを行う際、収支の考え方が異なる州があります。
Community propertyと呼ばれ、簡単にいうと結婚した二人のものは共有のものなので、収入も資産も半分で持ち合いましょう、という考え方です。*9
ルイジアナ州アリゾナ州カリフォルニア州テキサス州ワシントン州アイダホ州ネバダ州、ニューメキシコ州ウィスコンシン州にてこれが適用されます。*10
ジョイントでタックスリターンを出す場合にはそこまで大きく関わってこないのですが、別々でタックスリターンを出す場合には少しややこしくなるので、注意が必要です。
Nonresident Alienでも一定の条件に当てはまらないと配偶者のタックスリターンに収入を反映させなければならないようです。*11
調べてみると中々ややこしいので、これらの州にお住いの場合はご自身で判断せず、プロに相談することを強くお勧めします!

どちらのタックスリターンの方法を選んだらいいの?

まず、どちらの方法を選んだとしてもあなたの配偶者は結婚しているものとしてタックスリターンを出さなければなりません。
また、Residentとしてタックスリターンの義務が発生している場合にはFBARとForm 8938が必要となってくることもありますが、それについては後述します。*12


ここまで読むと、結婚直後のタックスリターンはややこしそうな空気がプンプンしますよね。
なので、Residentとしてタックスリターンの必要性がある場合にはプロに頼むことをおすすめします。
もし配偶者が別々にタックスリターンを行うことを決め、あなたがタックスリターンをしなくて済むのであれば、個人で行うことが可能そうですね。

ちなみに収入が二人合わせて$56,000以下だと無料でプロが相談にのってくれます。
 こちら: Free Tax Return Preparation for Qualifying Taxpayers
  https://www.irs.gov/individuals/free-tax-return-preparation-for-you-by-volunteers

FBARの申告について

アメリカに住んでいる人が、前年度に一時でも海外に資産を10,000ドル以上持っていたことがある場合にはFBAR(Report of Foreign Bank and Financial Accounts)の申告が必要となっています。
ここでの資産とは、銀行口座、証券、投資信託等を指します。*13

 ●「アメリカに住んでいる人」
ここではアメリカ市民やResidentの定義にあてはまる人を指しています。
そのため、K1ビザで渡米しAOSステータスのまま年を越してしまった場合には前述の税法上におけるResidentの条件をそのままあてはめれば良いようです。*14

 ●「10,000ドル」
海外通貨のレートをIRSが毎年決めており、2019年度は1ドル109.008円です。*15
前年度の場合、10,000ドルは1,090,080円ですね。

 ●申告期限と罰金
こちらもタックスリターンと同じく4月15日までとなっています。
この申告が漏れた場合には罰金を払わなければならないので、お気を付けください。

FBARについて詳しくは: Report of Foreign Bank and Financial Accounts (FBAR)
  https://www.irs.gov/businesses/small-businesses-self-employed/report-of-foreign-bank-and-financial-accounts-fbar

申告は以下のホームページより電子申告できますし、内容もそこまで難しくはなさそうです。
 こちら: BSA E-FILING SYSTEM
  https://bsaefiling.fincen.treas.gov/main.html

Form 8938の申告について

こちらは税法上のResidentとして、タックスリターンをする場合、もしくはNonresident AlienだがジョイントでタックスリターンをするためResidentとしてみなされた場合に必要となる可能性のあるFormです。*16

このFormの場合の条件は、

 ・配偶者とは別々に申告する場合、前年度の最後の日に全ての資産額が$50,000以上の場合、もしくは前年度内に$75,000を一度でも超えた場合
 ・ジョイントで申告する場合、前年度の最後の日に全ての資産額が$100,000以上の場合、もしくは前年度内に$150,000を一度でも超えた場合*17

資産の内容について詳しく見たい場合にはこちらのページの下に載っているので参考にしてください。
 資産詳細: Comparison of Form 8938 and FBAR Requirements
  https://www.irs.gov/businesses/comparison-of-form-8938-and-fbar-requirements

最後に

移住したからには避けられないアメリカのタックスリターン。
かなりややこしく、アメリカ人にもタックスリターンは嫌われているようです。

今回調べていく中でなるべく正確な情報を提供しようと心掛けましたが、正直ケースバイケースなことが多かったので、少しでも不安がある場合にはプロに相談してみてください。


この記事の情報は2020年1月現在のものであり、またここに記載された内容によって被った損害等の一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

*1:ソース: Free File: Do Your Federal Taxes for Free https://www.irs.gov/filing/free-file-do-your-federal-taxes-for-free

*2:ソース: Introduction to Residency Under U.S. Tax Law https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/introduction-to-residency-under-us-tax-law

*3:ソース: Alien Residency - Green Card Test https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/alien-residency-green-card-test

*4:ソース: Substantial Presence Test https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/substantial-presence-test

*5:ソース: Publication 504 (2018), Divorced or Separated Individuals > Married Filing Jointly, Married Filing Separately https://www.irs.gov/publications/p504#en_US_2018_publink1000175824

*6:ソース: Nonresident Alien Spouse https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/nonresident-alien-spouse

*7:ソース: Nonresident Alien Spouse > Election to File Joint Return https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/nonresident-alien-spouse

*8:ソース: Foreign Tax Credit https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/foreign-tax-credit

*9:ソース: Five Tax Tips for Community Property States https://turbotax.intuit.com/tax-tips/marriage/five-tax-tips-for-community-property-states/L4jG7cq7Z

*10:ソース: Publication 555 (01/2019), Community Property https://www.irs.gov/publications/p555

*11:ソース: Publication 555 (01/2019), Community Property > Nonresident alien https://www.irs.gov/publications/p555

*12:ソース: How To File Taxes When Marrying A Non-U.S. Citizen https://www.hrblock.com/tax-center/filing/personal-tax-planning/filing-taxes-when-married-to-non-us-citizen/

*13:ソース: Report of Foreign Bank and Financial Accounts (FBAR) https://www.irs.gov/businesses/small-businesses-self-employed/report-of-foreign-bank-and-financial-accounts-fbar

*14:ソース: BSA Electronic Filing Requirements For Report of Foreign Bank and Financial Accounts (FinCEN Form 114) > General Definitions > United States Resident https://www.fincen.gov/sites/default/files/shared/FBAR%20Line%20Item%20Filing%20Instructions.pdf

*15:ソース: Yearly Average Currency Exchange Rates https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/yearly-average-currency-exchange-rates

*16:ソース: About Form 8938, Statement of Specified Foreign Financial Assets > Instructions for Form 8938 https://www.irs.gov/forms-pubs/about-form-8938

*17:ソース: Comparison of Form 8938 and FBAR Requirements https://www.irs.gov/businesses/comparison-of-form-8938-and-fbar-requirements